「食と言葉」
第54回目となる今回は、アーティスト、料理家の岩間朝子氏を講師に迎え、
「食と言葉」をテーマにワークショップ・レクチャー・パフォーマンスを開催します。
岩間氏は食べるという生きるために必要不可欠な営みを、身体から自然環境、宇宙まで時空を超えて問い続けています。
この2回の講座では、それぞれゲストとのコラボレーションによって食と言葉の関係について考えます。
相手と言葉を交わし境界を行き来する。そこには、お互いがお互いの思考を食べる、取り込む(身体の中に入れるincorporate)という、カニバリズム的な含意がある。そうやって相手との境界線や、着想や発想の帰属先を曖昧にする行為は、それぞれの立ち位置を緩くする。そして、お互いの帰属先すら曖昧にし不安定さを作り出す。そこに生まれる違和感、その中にとどまり身を置く事、そのプロセスに強く惹かれる。―岩間朝子
第2回|レクチャーパフォーマンス
「啜る/綴る」 Spelling the Soup
講師:上崎千(芸術学)、岩間朝子(アーティスト)
日時:2017年11月4日(土)15:00-16:30
会場:東京都現代美術館リニューアル準備室(東京都江東区東陽7-3-5)
定員:25名
参加費無料、要事前申込
上崎千氏を迎え、岩間氏とともにレクチャーパフォーマンスを行います。
例えば、スープ。当日は「スープ」というこの、語感からしてきっと液状の、啜(すす)られるべきなにかであるに違いないその料理の名を繰り返し声にすることから始めるよりほかなく、「スープ」と口にするたびに尖る私の唇はちょうど、なにかを啜っているようなかたちになるだろう。とにかくスープが出来上がり、それが食器に移され、ふるまわれ、啜られ……誰かが、あるいは自分がそのスープを啜る音に耳を傾けたならば、そこで少なくとも、味や塩加減(あるいは食事のマナー)などについての意見が交わされることになるのだろう。スープを口にする人々の唇が「スープ」という語を発音するかたちになっていることを確かめ、人々のスープを啜る音が「スープ」と聞こえたならば、そこで改めてこの問いを温め直そう。―上崎千
上崎千|うえさき せん
1974年生まれ。東京都在住。「コンセプチュアル」と呼ばれる芸術と「キュレーション」と呼ばれる営みのあいだに生じる分化・脱分化・再分化のプロセスに関心がある。最近の論考に「ミュージアムと『ノンサイト』」『思考と物質のはざまに生じる塵芥は、情報の鉱床である。』(東京国立近代美術館、2017年)など。芸術の非展示的・非ミュージアム的な在り方についての問いを蒸し返す契機として、岩間朝子の表現に注目している。
More info: www.mot-art-museum.jp/sp/edu/course.html
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館
協力:山城弥生